はーい、フジカワです。

徒然なるままにポンコツっぷりをば。

眠れぬ夜の過ごし方(前編)

 実はですね、数日前に火事に遭遇しました。

燃えたのは隣の建物の隣の部屋です。

ワタクシがということは、ご存知かと思いますが、下の階にいるエルベねーさん(id:elve)もなのですが、結論からいうと2人とも無事です。

ニュースにならない程度でしたが、結果的に火の元は全焼でした。怪我人はおらず

 

これはside〜F〜フジカワのはなしです。

 

深夜、未明〜

 大きなサイレンの音と赤い回転灯の眩しさがカーテンから漏れだす。

とっくの間に寝ていたワタシはじんわりと意識を浮上させていくのだが、

「ここ最近、テレビでも火事多いもんなぁ、

それともよくある救急車要請かなぁ…」

 

そんな呑気なことを思いながら布団の中でムニャムニャしている間にも

赤色の回転灯が近くに見え、大きな声で叫ぶ人の数が増える一方。

そしてのっぴきならない声色で全て叫び声が増えたところで

パン!パン!  パン!

昔駄菓子屋にあった火薬を入れると安っぽい音がする拳銃のおもちゃのような音が連続して3回聞こえた。

(なんだ?ナンダ?なんだ?)

部屋の外では階段を勢いよく駆け降りたり駆けあがったり、大きな声で叫ぶ声がし始めこれは只事ではないことに気づく。

だって、夜中だぜ?みんな、寝てるだろう?

普通に考えて寝てるんだって。

慌てて布団から飛び起き、玄関ドアを開けるとそこには人が立っていたようで、ドアをぶつけてしまう。

(なんで、こんなところで人がつっ立ってんだよ!邪魔臭ぃ…)

同時に日常生活では絶対に出くわすことのないほどの煙とプラスチックの溶ける匂いや、明らかに何が燃えて有害物質が発生している匂いが目と鼻を襲った。

(なんだこのニオイとケムリは⁈)

ドアがぶつかった邪魔臭い人物はどこの階の人間かわからないが、同じ建物の住民。

ずんぐりむっくりな住民はワタシの部屋の上階に向けてスマートフォンで写真を撮っている。その先に見えるもの…

 

躍り狂う炎

 

階段を駆け上がったり降りていたのは防火服を着た消防士数名

(はぃい?もしかして、…コレはやばいやつだ…落ち着け、自分。)

ワタシの血の気が引くサー音が前身を走ったとき階段を登る1人の消防士に声を掛けた。

「あの、すいません、どこが燃えているのですか?」

「えっと、隣ですね」

「ワタシは避難した方がいいですか?」

「うーん、そうですね」

「わかりました。ありがとうございます」

とてつもなく冷静なやり取りとなる。

仕事柄、普段から慌てるとトンデモナイコトになるから絶対に慌てては行けないと自分に言い聞かせているだけあって、えらいぞ、自分。

 

ドアを閉め、下の階のエルベねーさん(以外ねーさん)に電話。

こんな騒ぎで下の階にいるねーさんが起きてないわけがない。

「ねーさん、ヤバい。隣が燃えてるって。逃げた方がいいよ」

「なんだか、ヤバい感じだよねぇ」

思ったより混乱していないようだ。それ以上、会話を続けることなく電話をきった。

 

  そうだ、避難する前にトイレに行こう。

いかん、延焼してる可能性があるから、照明のスイッチは押さないでおこう。部屋は暗いままトイレ前の洗面所の部屋に入ると、なぜがほわっと明るい。

おかしい。部屋の照明ひとつもつけてないんだぞ。

(なぜ明るいのだ…)

明るさの正体、洗面所の横にある小窓をみると、小窓が炎で真っ赤に光り、ゆらめき、照明をつけていない部屋が明るくしていることに気づいた。

窓から溢れる赤やオレンジの光は全て炎、この部屋にいる自分しか見ることのない光景だと。

 

火元は隣の建物。そしてワタシの部屋の真隣、

炎が揺らめいて色んな明るさになる。

(コレは本当にイカンやつだ)

 

トイレにいくのを諦め、部屋に戻り、近くにあった45Lの仕事用のリュックサックを引っ張り出して少し考えた。

 

ー何を持って逃げれば良いかー

カネ、

フク、

スマホ

ウワギ!

 考えた全てと目につく可燃性のあるスプレー缶をリュックサックに突っ込み、サンダルで外に出るにそれではと、とびきり大事なドクターマーチンを抱えて出ることにした。

大事なものはいっこだけ持っていこう。

いつも着ているダウンジャケットを着ようとしていたところ、

 

ドンドン!

と大きなノック音と共に鬼気迫った消防士が部屋に入ってくると

「このお部屋からホースを通して放水してもよいですか?」

と押しかけてきた。

「はい、大丈夫です。」

「ありがとうございます、では、今、ホースを持ってきます」

「わかりました。部屋の鍵は開けてでますのでどうぞ、勝手に入ってください」

そこそこ大きな声で応えたが、

一度、ドアを閉めた。

不思議とね、こういうときってドア閉めちゃうといきなり現実と遮断されちゃうもので。

外では収まることのなく、むしろ騒がしくけたたましく鳴るサイレンと緊急を要す叫び声が増えてゆく。

反してパチパチと洗面台の小窓の方から小さくも恐ろしく聞こえる何かが、いや、家が燃える音。キッチンの豆電球だけの暗い灯りの部屋。

 

燃えてしまったら、この部屋にある全部なくなっちゃうんだ。

色々ごちゃごちゃある部屋だけどさ、焼けたら何もなくなるのよね。(大事なことだから2回思う)

ああ、もう、この部屋に帰ってくることはないんだな。

 

「一年だったけど、ありがとう。たのしかった。」

さあ、玄関ドアを開けるか。

命があればどうにかなるでしょう、少し、寒いけど。

職場に行けばなんとかなるか、屋根あるし。

まだ寒い3月の深夜、ワタシは煙まく部屋の外に出て階段を駆け下りた。

たぶん、目が覚めてここまで5分〜10分の出来事。

 

 

続く